2018.07.14 10:00花葬/チョロ一 一松は昔、「本当は紫色なんて嫌いなんだ」と言っていた。 同じ顔がいくつもあるこの家の中でカラーアイコンというものは重要になり、いつしか好みというよりは義務化となっていた矢先にまるでわがままを言う子どもみたいにあいつはそう言った。別に嫌いなもんは嫌いなままでいいと思うし、あいつが...
2018.07.07 13:00火葬/一十四 煙の臭いがする。 長い、長い煙突が空に伸びていて、晴れているのか曇っているのか、朝方なのか夕暮れなのかそれもよく分からないが、煙はゆっくりゆっくり途切れることなく漂っていた。見ていると、そんなつもりはないのに眼球のピントが勝手にズレていく。だから、よく見えない。伸びる煙の線がダ...
2018.06.30 10:00冷凍葬/カラトド 人魚姫。子どもの頃、絵本で読んだたくさんのおとぎ話の中の一つだった。 人魚姫は深い海の底のお城に住んでおり、人間の世界に憧れていた。十五歳になり、外の世界へ出ることが許された人魚姫は、海の上で偶然出会った王子様に恋をする。人魚姫は魔女のところへ行き、自分を人間にしてほしいと頼む...